上田市のICT教育について
中村 悠基
続きまして、上志の風でおなじみになりましたスーパーシティに関連し、ICT教育について質問してまいります。
ICT教育、いわゆるパソコンやタブレット端末、インターネットなどの情報通信技術を活用した教育手法のことであります。一昔前では考えられなかったことですが、1人1台のスマートフォンが当たり前になり、情報通信技術についてもかなり身近なものとなりました。
スマホ、タブレット、パソコンが違うものとして扱われることも多いですが、大きな違いは、大きさ、入力方法、中身の処理能力であり、根本的にはスマホの進化によって、スマホ、タブレット、パソコンでできることはおおよそ同じになってきました。
まさに技術の進歩による部分であります。しかし、教育現場を見ると、導入に多額の費用がかかる部分でもありますので、まだまだICTの導入が進んでいないのが現状であると認識しております。
そこで、質問いたします。
各国で行われているICT教育と比較した場合、上田市のICT教育の進捗状況はどうか。また、全国で行われているICT教育と比較した場合はどうか。
以上、質問いたします。
教育長(峯村 秀則君)
上田市のICT教育の進捗状況につきましてご質問いただきました。
まず初めに、諸外国との比較についてでございますが、2018年にOECDによる教員環境の国際比較の調査で、教員が中学校で生徒に課題や学級での活動にICTを活用しているかとの調査項目がございました。教員がみずからの授業において、ICT教育をしばしばまたはいつも行っていると行っていると回答した割合は、3カ国の平均は51.3%でございましたが、日本は17.9%で、参加48カ国の中で最下位から2番目でございました。ICTを活用した授業について積極的に行う日本の中学校教員の割合は、前回2013年の調査に比べてふえてはおりますが、依然として低い状態であることがわかりました。教員のICT活用のスキルについて課題があると考えております。
生徒にICTを活用させることが進まないもう一つの原因として、教育用コンピューターの整備が進んでいないことが考えられます。
市教委では、これまで校内LANの整備、普通教室への大型モニターや教材提示装置の導入などに努めてまいりました。これらの整備率はほぼ100%になっております。上田市は全国でもトップクラスでありまして、この点では群を抜いております。しかしながら、コンピューター本体の整備率につきましては、平成31年3月1日現在の調査で、長野県は全国平均18.6%と同率でありましたが、上田市の整備率は12.3%であることから、ICT教育の進捗状況は全国平均よりも低いものと考えられます。
以上でございます。
中村 悠基
続きまして、ICT教育の1人1台のパソコン導入に関して質問してまいります。
まず初めに、パソコンを教育現場に導入することによって、どんなことが実現可能なのか。1つ目として、個人の習熟度の判定による一人一人の能力に合った教育の確保があります。これは、一人一人の得意、不得意をAIが判別し、解くべき問題を解くことにより、効率的な勉強をすることができます。AIドリルの導入やデジタル教科書の使用は、来年度の学習指導要領にも記載されるとの情報もあります。
2つ目として、デジタル教科書の導入で授業でノートをとる必要がなくなり、授業の動画を繰り返し見ることにより、自分のわからない部分を家庭でも理解できるまで聞くことができるようになります。
3つ目として、教師の負担軽減があります。先生たちの負担は、最初の導入段階では負担もかかりますが、長期的に見れば、相当な負担の軽減になります。さらに、業務の効率化をすることにより、働き方改革にもつながります。
4つ目として、例えば生徒が入院した場合や、不登校の生徒がいつでも、どこでも、みんなが学べる環境を手に入れることができます。
5つ目として、後ほど詳しく説明いたしますが、スティーム教育を行うことでクラスが活発になり、多くのコミュニケーションが生まれるなどなど、多くのことが実現可能になります。
我々は、青春の多くの時間を既存の学校システムで既に過ごしてきたせいで、それが当たり前であり、最善であり、そうでなければならないと思い込んでしまっております。学校には学年があり、教室にはクラスメートが集まり、黒板にチョークで書かれたものをノートに写す、そういった授業というものが本当に最善でしょうか。
何のために学校があるのか、誰のための学校なのか、何のための授業なのか、原点回帰し考える必要があると私は思います。
既にご存じの方も多いかと思いますが、東京都の麹町中学校や長野県の中でも何校かでは、学級担任制や定期テストを廃止にしている学校もございます。
我々大人が育った環境が全てではなく、より子供たちのためになる授業へと早急に変えていかなければなりません。そのためにも、まずはICT教育を導入する必要があり、導入するに当たり一番の問題になりますパソコンの導入について、2点質問いたします。
小中学校に設置している教育用パソコンの1台当たりの導入経費と、児童生徒1人当たりの導入経費は幾らか。また、教育用パソコンは1台当たり何人の児童生徒が使用しているか。
児童生徒が教育用パソコンを1人1台使える環境を整備した場合の1台当たりの導入コストは幾らか。パソコンを導入する際はどのような仕様とするか。また、搭載する機能や規格などに基準はあるか。
教育次長(中澤 勝仁)
教育用パソコンにつきまして、幾つかのご質問をいただきました。順次、ご回答申し上げます。
小中学校の教育用パソコンにつきましては、パソコン教室に整備しておるところでございますが、全学校一斉での導入はしておりませんので、整備する年度によりまして台数や機器の種類などが違いますことから、1台当たりの導入経費につきましては年度により異なっております。参考までに、今年度パソコン教室用の機器の更新を行いましたので、その例で申し上げますと、1台当たり17万7,726円の導入経費がかかりました。また、パソコンは現在1台当たり8人の児童生徒が使用しておりますが、1人当たりに換算いたしますと2万511円となります。
次に、児童生徒が教育用パソコンを1人1台使用する考え方で整備した場合、どのメーカーかあるいはノート型パソコンかタブレット型パソコンを使用するかなどによりまして、経費は大きく違ってまいります。仮に来年度パソコン教室の整備を予定しております小学校をモデルにタブレット型パソコンで整備するとして試算いたしますと、児童1人につきまして、1台当たり9万6,347円という試算額が出ております。この試算額の内訳でございますが、機器本体は5万円余でございますが、そのほかにタブレット型パソコンを保管、充電するためのカートやセキュリティーソフトライセンス等を含んでおります。また、この金額にはワイファイ整備等にかかわる金額は含んでおりませんので、実際に学校の中で使用するには、さらにICT機器を利用する環境を整備する経費がかかります。
次に、機器の仕様に関するご質問ですが、搭載する機器や規格などにつきましては、国から最低限の基準が示されております。大きさで言えば9から14インチ、無線LANの搭載、片側カメラ機能、音声出力端子等の機能が挙げられておりますので、市教育委員会といたしましても、この基準をクリアする機器を整備してまいりたいと考えております。
以上でございます。
中村 悠基
パソコンの導入経費は、先ほど17万円ぐらいということでしたが、業者の言いなりで要らないもののついたものを購入したり、不要なハイスペックなものを導入したりとなると、やはり高額になってしまうと思います。しかし、国で示したものであれば、タブレットではなく、パソコンで約1台5万円での導入ができるという指針が示されております。また、上田市の小中学校の児童生徒数約1万2,000人全員に単年度で1台ずつ導入するとなると。先ほどの5万円というもので計算いたしますと、およそ6億円がかかり、余り現実味のない数字になってしまいます。しかし、毎年度新しいものを全生徒分購入する必要はありません。
また、11月19日のことですが、西村康稔経済再生相は閣議後会見で、学校で児童生徒が1人1台のパソコンを使える環境を整えるための予算を、取りまとめ中の経済対策に盛り込むと明らかにいたしました。このように国から出てくるお金も多いですが、そもそも国からお金がおりてこないにしろ、このまま子供への投資をしなければ、我々が年金をもらうころまで、日本が世界の中で先進国という立場を維持することはできないでしょう。
そうならないための教育の充実でもありますが、先ほどから述べているようにICT教育導入に対する資金繰りが最大のネックになってくるかと思います。しっかりとした導入計画が必要になりますので、その点に絞って質問いたします。
1つ目として、国は教育のICT化に向けた環境整備5か年計画を策定し、2018年度から2022年度まで単年度で約1,805億円の地方財政措置を講じるとしているが、上田市への充当額は幾らか。
2つ目として、国は2025年までに児童生徒が教育用パソコンやタブレットを1人1台使える環境の整備を目指すとしているが、整備が完了するまでの計画はどうか。また、整備が完了するのは最短で何年後になるか。
以上、2点質問いたします。
教育次長(中澤 勝仁)
まず、国からの充当額でございますが、地方交付税は地方公共団体間の財源の不均衡を調整するための制度でありまして、地方交付税の使途につきましては、地方公共団体の自主的な判断に任されております。また、基準財政需要額から基準財政収入額を差し引いた財源不足額が普通交付税として交付されておりますけれども、ICT化に向けた環境整備に必要な経費につきまして、国が示している標準的な1校当たりの財政措置額から試算いたしますと、平成30年度は基準財政需要額に1億9,600万円余が算入されている計算となります。
次に、整備計画についてですが、国が策定いたしました教育のICT化に向けた環境整備5か年計画では、2018年度から2022年度までの間、その必要経費につきまして地方財政措置を講じるとされております。この時点での国が目標としている学習者用コンピューターは、3クラスに1クラス分の整備を掲げておりまして、市教育委員会の場合、この水準での整備計画では、今年度から7年間ほどかかる計画となっております。
なお、議員ご指摘の児童生徒一人一人がそれぞれ端末を持ち、十分に活用できる環境を実現するとした趣旨の国の方針は、ことし6月に新たに出されたものでございまして、市教育委員会としての現時点での整備計画は未定となってございます。
以上でございます。
中村 悠基
国からは1億9,600万円のお金が、その名目ではないにしろおりているということなので、ぜひICT環境の整備にお金を充てていただきたいと思います。
ことしの6月に示されたばかりということで、計画がまだできていないかと思いますけれども、これは本当に一刻を争う問題だと思いますので、早急にその計画を立てていただければと思います。今まで国が示した、先ほど申し上げましたが、環境整備5か年計画の中でも、目標は2022年までに3クラスに1クラス分のパソコン導入でしたが、国はことしになってから、先ほども申し上げました6月、2025年には全ての生徒1人に1台のパソコン導入を示唆しました。そこからもわかるように、早急な1人1台の導入が必要になり、全国の小中学校で一斉に導入を進めた場合、需要に対して供給が安定してあるのか不明瞭であります。
ほかの自治体よりもスムーズにパソコンの導入ができるように、今から早急な策定と導入の準備をお願いいたします。
ここまでは実務的な部分を質問してまいりましたが、以降未来に対しての上田市のビジョンについて質問していきます。経産省が令和元年6月、ことしの6月に出した提言に未来の教室ビジョンというものがあります。これはエドテック、いわゆるエデュケーショーン(教育)とテクノロジー(科学技術)の造語でありますが、その力を使って一人一人に最適な学びを、スティームの学びで一人一人が未来をつくる当事者にをコンセプトに、ICTを活用し、従来の一律、一斉、一方向の授業形式ではなく、個別最適化された授業をつくっていくために作成されたものであります。
それでは、個別最適化された授業とスティーム教育について、聞いたことがない方も多いと思いますので、簡単に説明させていただきます。まず、スティーム教育とは、科学、技術、工学、数学の英語の頭文字を取ったもので、統合的に学習するステム教育にさらにアートを加えて提唱された教育手法であり、教科学習や総合的な学習の時間、特別活動も含めたカリキュラムマネジメントを通じ、一人一人のわくわくする感覚を呼び覚まし、文系、理系を問わず教科知識や専門知識を習得することと、探究プロジェクト学習の中で知識に横串を刺し、創造的、論理的に思考し、未知の課題やその解決策を見出すことが、循環する学びを実現することであります。
その教育の有益性を図るために実証授業が行われましたので、簡単に事例を紹介します。
千代田区麹町中学校で行われた実証授業では、教室ではなくカフェテリアにおいて生徒が自由に着席し、一斉授業を行わずに、1人1台のパソコン利用環境でエドテック教材、いわゆるAIドリルを使用した個別最適化学習が進められました。
この実証は、個別の希望により編成された発展クラス、成績上位の生徒向け応用問題を扱うクラスと基礎クラスの2つのクラスがあるうち、基礎クラスにおいて実施され、通常の授業で単元を修了するために要する時間の2分の1で全ての生徒が単元を修了し、テストの成績についても発展クラスとの差を縮めました。
また、パソコンを使う自学自習環境を使った結果、非常ににぎやかで活発なクラス空間が生まれた点も大きな発見であり、生徒たちが自分のペースで学び、自由な質問を許され、助け合い、学び合う姿が見られたとのことです。冒頭でも申しましたが、これらの実証結果からもわかるとおり、何が最適か早急にいま一度見直す必要があると思います。
それでは、ICT教育最後の質問となりますが、
1つ目としてICT教育としてもさまざまな内容のものがあり、これからどんなICT教育を実現していくのか、その方向性を明確にすることが重要かと思います。上田市としては、ICT教育の環境整備を進めているが、今後の整備方針はどうか、どんなICT教育を実現していくか。
2つ目として、現在上田市で取り組んでいるソサエティー5.0ですが、その実現に向けた教育委員会の方針はどうか。
以上、2点質問いたします。
教育長(峯村 秀則)
今後の整備方針についてご質問いただきました。
文部科学省は、新時代の学びを支える先端技術活用推進方策をことしの5月に公表しております。この中では、子供たちの多様化、例えばほかの子供たちとの学習が困難である子または自閉症、学習障害などの発達障害の子等々がいるわけですが、多様な子供たちを誰一人取り残すことのない公正な個別最適化された学びの実現を求めています。上田市教育委員会といたしましても、ICT教育は単に機器を整備することだけが目的ではなく、個々の子供たちの学びにいかに寄り添って支援するかということにより、未来を切り開く資質、能力を育みたいと考えております。
しかしながら、全国的に見ましても、現状ではどのような場面でどのような機器を利活用することが効果的なのか、教育機関や研究機関での実証的な検証が少ないなどの課題があります。今後国や先進都市などの事例や多くの情報を収集しまして、市教委として子供たちの学びの環境を整備していく所存でございます。
次に、ソサエティー5.0についてでございますが、定義については略させていただきますが、令和2年度から改訂される新学習指導要領では、コンピューター等を活用した学習活動の充実やプログラミング的思考の育成を行うことが明記されております。
教育委員会では、来年度からのプログラミング教育に対応するため、上田市教育委員会に籍を置く県から派遣された指導主事による出前授業や教員のための研修等を各校で開催し、子供たちに合った学習内容を研究するとともに、新学習指導要領に沿って情報活用能力の素地を育成できるように取り組んでいるところでございます。
また、新学習指導要領では、主体的・対話的で深い学びの実現に向けて取り組むようにされていますが、このような流れの中にあって、これまで教育現場で大事にされてきた言葉に「不易」と「流行」という言葉がございます。学校教育には、どんなに社会が変化しようとも時代を超えて変わらない価値あるものがございます。例えばともに学び合うことの大切さ、豊かな人間を育てること等々、こうしたものを子供たちに培うことは、いつの時代に、どこの国の教育においても大切にされなければならないものでございます。人工知能がどんなに進化しようとも、それが行っているのは、与えられた目標の中の処理であります。人間は目的をみずから考え出したり、多様な他者と協働しながら目的に応じた答えを出す力がございます。
教育の基軸となる不易なるものを見失ってはならないというふうに思っております。
しかし、時代が変化していくことはとめられません。学校教育においては、人と人との関係で深める学び、ICTを活用した学び、双方を効果的に組み合わせていくことが求められ、今後総合的に研究していくことが肝要であるというふうに考えております。
以上でございます。