合併算定替の縮減額について
中村 悠基
通告に従い、まずは令和2年度当初予算編成と合併について質問してまいります。
平成18年3月に旧上田市、旧丸子町、旧真田町、旧武石村の1市2町1村が合併し、新しい上田市が発足いたしました。地方分権改革により、国及び都道府県から移譲される行政事務権限は多く、自治体の行政基盤強化と自治体の広域化による経費削減による地方交付税の削減を目的に、平成の大合併を国は主導いたしました。
一方、地方自治体としては、普通交付税の減額を先延ばしすることや合併特例債活用による有利な起債の利用、業務の効率化による経費の削減等が挙げられると思います。
国は合併に際し、合併による経費削減は直ちに実施できるものばかりでないため、行政サービスの集約化、効率化により必要経費が低減に向かうまでの必要期間として、2005年度までに合併した市町村は合併後15年間、2006年度以降に合併した市町村は合併後10年間において、合併がなかったと仮定した場合の財源不足額をもとに普通交付税の交付額が決定される合併算定替えを適用するといたしました。
この制度により、合併市町村は、理論上は実際の財源不足額以上の補填がされていたことになります。
この特例措置である合併算定替えも5年間にわたり徐々に縮減され、多くの市町村では2018年度以降適用がなくなります。
上田市でも令和3年度の当初予算から合併算定替えがなくなり、いわゆる一本査定になることで、先ほど申し上げましたとおり、今まで国から配分されていた普通交付税が少なくなります。
そこで、質問いたします。
1つ目として、平成30年6月定例会の一般質問では、合併算定替え終了による普通交付税の縮減額は約8億円を見込んでいるとの答弁があった一方で、令和2年度当初予算編成方針では、縮減額を約10億円としているが、約2億円の差額が生じた理由は何か。
2つ目として、合併算定替えが終了する令和3年度以降は、生じた差額に対してどのような対応をとるのか。予定していた計画から2億円も多く縮減されるということで多くの不安がありますので、以上2点質問いたしますが、ぜひ我々を安心させていただければと思います。
財政部長(山口 武敏)
普通交付税の合併算定替えによる縮減額に関するご質問でございます。
合併算定替えにつきましては、いわゆる平成の大合併に当たっての制度として、議員のご質問にありましたように市町村合併後、当面は行財政運営に係る経費の急激な節減が困難であることを考慮し、旧市町村が合併しなかったと仮定した場合の個々の市町村の交付税の算定額の合算額と、新市としての交付税の算定額と比較し、大きいほうの額を普通交付税とする特例制度でございます。合併後10年間は、合併算定替えによる増加額の全額が交付されますが、11年目、上田市では平成28年度から5年間で段階的に縮減され、16年目の令和3年度からは新市としての算定額、いわゆる一本算定により交付されることとなります。
上田市における合併算定替えによる増加額は、合併当初の平成18年度の算定では18億円余となっており、この増加分が合併算定替えの縮減により減少することが市の財政運営に与える影響を踏まえまして、平成19年3月に第一次上田市行財政改革大綱を策定し、定員の適正化による人件費の削減や既存事業の見直し等による歳出削減の取り組みを進めてまいりました。
こうした中、合併算定替えによる増加額が平成22年度に25億円余に拡大し、その後もおおむね25億円程度で推移したことから、最終的にこの25億円が縮減された場合は、歳出削減等の改革努力だけではこの軽減が吸収できない状況が見込まれたことから、同様の状況でありました全国の合併市町村が連携し、国に改善を求めてきた経過がございます。
その結果、平成26年度の算定から、合併により面積が拡大する等市町村の姿が大きく変化したことを踏まえ、合併時点では想定されていなかった財政需要を交付税の一本算定に反映する見直しが、段階的に行われるようになりました。この見直しでは、5年程度で総額約6,700億円が段階的に算定に反映されることとなっており、平成30年度で見直しの内容が確定し、以降令和2年度まで調整が行われております。
昨年度の答弁では、この見直しによる上田市への影響について、直近の平成29年度の算定結果をもとに平成30年度以降の縮減額を推計し、最終的に約17億円が一本算定に加算され、見直し前の合併算定替えの増加額約25億円との差額の約8億円が最終的な縮減額になると見込んでいたところでございます。平成26年度からの5年間で見直された内容は、合併市町村の支所に要する経費を初めとして、消防、土木、教育、福祉、衛生など多岐の費目にわたっております。このため、合併市町村においては、合併時点では想定されていなかった財政需要が交付税算定に反映されることとなり、需要額が増加いたしました。
一方で、一本算定の基準財政需要額につきましては、これまでの算定より減少したことに伴い、両方の差額が拡大しまして、結果として令和元年度の普通交付税算定結果に基づく推計では、縮減額が2億円ふえ、10億円となったものでございます。
続いて、合併算定替えが終了する令和3年度以降の生じた差額への対応でございますが、予算編成におきまして縮減が始まった翌年の平成29年度から、経常経費の上限額にシーリングを掛けて一般財源の縮減を図ってきたところでございます。令和2年度予算では、全ての所属に対して3%のマイナスシーリングとしておりまして、これによる削減額が年間でおおむね1億円程度ということになりますので、これに加えて既存事業の見直しとして、終期を見越した事業の設定や各課から何か1つ以上の改善、見直しを行うこととして新年度の予算編成に当たっております。
また、これらの歳出削減に係る取り組みのほか、歳入面におきましても公共施設等の使用料、また手数料の見直し、減免の取り扱いに係る検討などを進めるとともに、有利な起債事業の選択や借り入れ先の精査等を行い、一般財源の確保に努めてまいりたいと考えております。
中村 悠基
続いて、合併による特例措置が終わろうとしている今、そもそも合併してよかったのか悪かったのか、しっかりと検証していくべき時期であると思います。何度か市議会の一般質問でも取り上げられてきた話題ではありますが、その後の進捗などを含め質問いたします。
合併のメリットは先ほども述べましたが、行政が行うべき業務を集約し効率化することにより、コストの削減が図れることです。集約化、効率化する猶予期間として設けられたのが、合併算定替え等の特例措置が講じられていた期間であると考えると、業務の集約化と効率化につながったのかという疑問があります。
そこで、質問いたします。
1つ目として、合併算定替えがなくなる、イコール集約化、効率化が進んだと仮定すると、もうすぐ集約化、効率化が完了するはずだが、スケールメリットによる経費削減効果はどのくらいあったか。
2つ目として、本来なければならない合併による効果がまだ出ていない、生かし切れていないことはあるか。
以上、2点質問いたします。
財政部長(山口 武敏)
合併から16年目となる令和3年度で合併算定が終了することに関しまして、合併によるスケールメリットについてのご質問でございます。
平成18年3月の合併は、厳しさを増す地方財政の中において、地域内分権を推進し、多様化する市民ニーズに的確に対応し、強固な行財政基盤を構築するため、スケールメリットを生かした4市町村による合併が進められたものでございます。その結果、職員人件費で試算してみますと、例えば平成31年4月1日現在で職員数は広域連携等への派遣職員を除いて1,234人となっております。これは、合併前の平成17年4月1日と比較いたしますと、ちょうど100人のマイナスとなっております。普通会計ベースで人件費を比較いたしますと、平成30年度決算では平成17年度と比べて4億6,000万円余の減、また平成17年度からの累計では89億4,000万円余の削減が図られているものと試算することができます。このように人件費を初めとして、旧市町村で実施されていた事務事業の一元化による経常経費の削減等の効果をもたらした一方、少子高齢化に伴う社会構造の変化に対応しながらさまざまな分野の取り組みを実現してきております。
また、交付税措置率の高い合併特例債については、平成30年度末現在で360億円余を普通建設事業費等の財源として活用しております。合併特例債は、合併後の市町村が新市の建設計画に基づいて実施する公共施設の整備事業と基金の積み立てに要する経費について、対象事業費の95%の充当率で、元利償還金の70%が今年度の交付税の基準財政額に算入されるということから、地域振興基金の造成、これは各4地域のそれぞれの地域の振興のため、また地域間をつなぐ道路整備や小中学校の改築、文化施設等の建設に活用し、財政負担の軽減を図ってきたものでございます。
最後に、合併による効果がまだ出ていない、また生かし切れていないといったことがあるかというご質問でございますが、合併以降地域の皆さんによる主体的な地域づくりが進められ、新市の一体感の醸成、持続的な発展に向けてさまざまな事業が取り組まれてまいりました。こうした中、4市町村の合併により公共施設の数も大きくふえ、その後は施設の老朽化も顕在化してまいりました。加えて少子、超高齢社会に突入し、人口減少といった局面に差しかかってきております。このような状況のもと、上田市公共施設マネジメント基本方針、こちらに基づく施設の統廃合などにつきましては、合併による効果を今後生かしていく分野であろうと、このように考えております。
以上でございます。